1ca, 1989), John Rishel (1995年のオルセイ美術館,フィラデルフィア美術館でのRichard Shiff (Cezanne and the End of lmpressionnism-A Study of the Theory, Technique, and Critical Evaluation of Modern Art, 1984), Medipa,JoyceDix-on (Cezanne and Modernism : The Poetics of Paintings, 1990)などによる文献セザンヌ回顧展カタログに準備中)などの欧米におけるセザンヌ受容研究,ひいては学的セザンヌ像形成研究,ひいてはモダニスム研究に連なるものである。これまで調査の不十分であった日本における受容の状況やセザンヌをめぐる日本のモダニスムの状況を明らかにすることで本研究は以上の欧米の研究を補完する意義をもつことになる。第三に,本研究は,セザニスムという共通の視点から欧米と日本の状況を比較するもので,文化的コンテキスト(芸術論や美学)の差異や交流を摘出する比較文化論の一例としての意義も担うことになるものと思われる。最後に,本研究の最終目的として,展覧会「セザンヌと日本」の開催がある。本研究は,平成元年度文部省科学研究費の継続であるが,当初より展覧会の基礎的資料作成を目的として構想してきたものである。この度の調査研究は展覧会の企画・開催に不可欠のものであり,この目的の実現に一歩も二歩も前進するものと確信している。⑲ ニコラ・プッサンの視覚的源泉に関する基礎的研究ー1640年代を中心に一研究者:愛知県美術館学芸員栗田秀法プッサンの1630年代,40年代の物語画は,その一見わかりやすそうな外見が一因となってその重要性にも拘らずどちらかといえば研究者の関心の薄い領域といえるが,プッサン独自の造形世界が確立し完成するという点でその重要性は疑うべくもない。そうした物語画を生み出した「物語手」プッサンの特質を解明するには例えば記号論的な手続きによる作品そのものの構造の分析が必要であることは言うまでもない。しかし,そうした分析が構想源,個々のモティーフの借用先の特定を踏まえてなされた場合,画家の意図,作為が一層明瞭になり,より豊かな成果が得られることは疑いない。したがって本研究の目的には,美学的な探求と歴史的な探求の融合のための基礎手続きを整備することに主眼が置かれている。ところでプッサン研究の一つの柱をなしてきた作品帰属,作品の年代決定の作業は-50 -
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