ある。いま一つは，「公余探勝図」を始めとして，小泉斐「黒羽城真景図」や守住貫魚「全国名勝図巻」などの実景図を描くことを命じた権力者の存在である。こうした人々が，実景図制作を支えていたことに注目し，考察を進めることとする。⑫ 戦国期武将肖像画を中心とする俗人肖像画の基礎的研究研究者：毛利博物館学芸員城市真理子室町・桃山時代の俗人肖像画，ことに武将肖像画は多数の作例の存在が知られている。しかし，それらの作品群は相当に優れたものであっても往々にして歴史資料としてのみ扱われ，美術史的見地から分析されることは極めて少なく，その様式上の分類や時代的変遷さえも分析されてきてはいない。私の所属する毛利博物館には毛利氏関係の歴史・美術資料が集中しており，私はかつて「毛利元就画像」の寿像と遺像（共に重文），図様に共通点の多い「毛利隆元画像下絵」を照合し，その制作過程・画風・技法を検証し，賛文と毛利氏の古文書など歴史資料をつきあわせることにより，制作目的も考察した論文を執筆した。その論文中で，肖像画史に於ける位置づけのために，武将肖像画群の様式による分類も試みたが，その際に痛感したのは，もっと数多くの作品を確認すること，毛利元就画像に対して行なったと同様の調査を他の多くの作例に対しても行なうべきであるということであった。このような観点により，各地に伝存する肖像画群について資料収集・調査を行なうことで，室町・桃山時代の肖像画研究のための資料集成ができるであろうし，そのデータベース化によって，知識の共有化がなされ，肖像画研究の発展に寄与できよう。またその資料集成を基盤として様式史や肖似性という肖像画研究の根幹に触れる問題の考察にも展望が開けるであろう。⑬ 鎌倉時代初期慶派無銘彫刻の基礎的研究研究者：奈良国立博物館学芸課研究貝蠣波恵昭・「構想理由」申請者はこれまで日本彫刻史，とりわけ鎌倉時代初期の仏師運慶を中心に研究を続53 -
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