2回鹿島美術財団賞授賞式,平成8年度助成金贈呈式に引き続いて,2名の財団賞授(4) 第11回研究報告会② 中村るい:「紀元前4,3世紀を中心としたギリシア葬祭絵画の研究文に対応する場面が上部に描かれている。中村氏は,この墓碑絵画を,ギリシア絵画における空間表現の系譜のなかに位置付け,ギリシア葬礼慣習の反映を解明するばかりか,ギリシア神話におけるアルケスティスやアリアドネなどの女性像との図像上の関係を明らかにし,ギリシア女性の社会的地位や死という私事が墓碑という公的なものにいかに転換されたかを考察している。周到なこれまでの研究に対する配慮と斬新な視点は高く評価されるものである。本年度の研究報告会は,平成7年5月16日鹿島KIビル大会議室において,上記の第賞者と,それに次ぐ優れた研究成果を上げた,京都工芸繊維大学大学院博士課程・瀬緑氏と帝塚山学院大学助教授・加須屋誠氏の計4名の研究者が次の要旨の報告を行い,約120名が聴講した。本研究の対象となった「ヘディステの墓碑」は,マケドニア王国のデメトリオス1世(前294■287)がパガサイ湾周辺のいくつかの都市を集めて建設した都市,つまりシュノイキスモス(集住化)によって生まれたデメトリアスで発見され,現在ヴォロス博物館に収蔵されている。墓碑の下部には,産褥の床で帰らぬ人となった妻と死産の子供を悲しむ銘文が刻まれており,その銘……ヘディステの墓碑」-19
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