物展示会などが各地で開催されたが,川島,飯田や弁天合資会社の刺繍などは絶賛を浴びた。フランスの様式の傾向は,その後アール・ヌーヴォーヘ向かって成熟化の道を辿る傾向にあったと考えられる。② 『聖衆来迎寺本「六道絵」の調査研究ー「畜生道図」をめぐって――・』報告者:帝塚山学院大学助教授から天道に至る六道世界の様相と念仏による功徳を説くものである。本作品のうちの一幅「人道不浄相図」については既に私見を披泄した(注)。本日の発表ではこれに続いて,本作品の中でも従来あまり衆目を集めることなく,それゆえ研究史上言及される機会の少なかった「畜生道図」(以下,本図と呼ぶ)について,図像解釈学的視点から分析をなしてみたい。【第一章自然的主題】本図画面左上上部には荷物を運ぶ牛馬の姿が描かれている。その図様は一遍聖絵などの絵巻物に添景として描かれた牛馬の様子と近似している。一方,聖衆来迎寺本と同じく六道絵に属する北野天神縁起絵巻八には荷物を運ぶ動物として象の姿が描かれている。荷を背負う象については『往生要集』中に言及があり,北野天神縁起絵は『往生要集』言説に依拠して描かれたものと考えられる。これに対して本図は,一遍聖絵との図様の近似性からみて,我国中世当時実際に見られた巷の風景を畜生世界を表すモチーフとして意図的に採用したものであることが窺えよう。この牛馬と同様に,本図において続く鹿狩,鵜飼,鶏合,鷹狩などの図様はいずれも我国の現実の有様に基づいて描かれたものである。加えて,これらの図様は春夏秋冬の季節の変化に従って配列されている。この全体の構成面において,本図は平安時加須屋【緒言】私は平成5年度鹿島美術財団より研究助成を受け,滋賀県・聖衆来迎寺の所蔵する六道絵について調査研究を行った。周知の通り,本作品は鎌倉後期の制作で十五幅一具をなす仏教説話画であり,現在,東京・京都・奈良の各国立博物館と大阪市立美術館並びに滋賀県立琵琶湖文化館に分轄保管されている。その主題とするところは,基本的に恵心僧都源信撰述の『往生要集』の記述に準拠して,地獄_ 22 _ 誠
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