槃変相図が,わが国の涅槃図に大きな影響を与えたものと考えられる。李朝仏画のなかでは李朝13代の王・明宗の母,文定王后発願による広島・宝舟院の絹本著色薬師三聰図や兵庫・江善寺の絹本著色釈迦三聰図が興味深い。これらの画中には明宗の病気平癒を祈って,嘉靖44年(1565)に釈迦・弥勒・薬師・阿弥陀を金画で50禎,彩画で50禎の合わせて400禎を制作したことが記されている。宝寿院本,江善寺本も文定王后発願の400禎本のうちのひとつである。そして和歌山・如意輪寺の絹本著色龍華会図では,恭焚王大妃(12代仁宋王妃)が明宗の極楽往生を祈願している。つまり明宗は隆慶元年(1567)に,すでに没していたのである。このように隣国のできごとが本調査によって,再確認できることも有益である。28 -
元のページ ../index.html#48