鹿島美術研究 年報第13号
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しいと思われる様式や思想を過去の例より選択し,吸収する態度を併せもっていた点で,19世紀の英国の社会的状況を極めて複雑に示しているといえよう。今回の研究では,その歴史主義に焦点をあて,ラファエル前派を巡る美術史的文脈を解きほぐし,この時期の英国に顕著な中世主義,あるいは産業革命の進行への反動である理想主義を反映した,中世美術の研究・摂取について考察したい。ラファエル前派における過去の美術の影響については,1984年JulianTreuherz'The 脈におけるラファエル前派再考」がある。これらの研究成果と,原資料となるFordMadox主題」を支えたデータ,様式,構成について分析し,彼らが実際に参照した大英博物館・各地美術館の彩色写本,これらを複製した当時の出版物およびベルギー,フランスで実際に見学したフランドルや初期イタリア美術と,作品の影聾関係を明らかにしたい。1994年にはTheDjanogly Art Gallery(ノッティンガム)にて,展覧会The画とヴィクトリア朝後期絵画の関係が論ぜられている。これに北方ルネサンス絵画と今回テーマとしている英国で当時公開されていた中世美術の影聾が明確となれば,ラファエル前派の歴史的側面が,そのあいまいな「ラファエル前派」という呼称をのりこえて,浮かび上がることが期待される。⑰ 日本中世庭園史の比較美術史的研究研究:東京大学大学院教授香港大学講師(教授相当)本研究の主たる目的は,現在その出版計画が進行しつつある研究書『紫と薔薇:日行することである。この研究書の出版に関して,すでに複数の出版社との交渉が進行中である。この調査研究の意義は,日本庭園に関してこのような比較文化史的観点に立った研リチャード・スタンリー=ベーカPre-Raphaelites and Mediaeval Illuminated Manuscripts', 1973年JohnChristian 'Early German Sources for Pre-Raphaelite Designs',そして1995年JaneLangley 'Pre-Raphaelites or ante-Dtirerites?'があり,高橋裕子氏による1989年「美術史的文Brown, C. A. Collins, D. G. Rossetti等の日記・手紙類を参考として,彼らの「中世Religion of Beauty in late Victorian Artが開催され,初期イタリア・ルネサンス絵本中世庭園の研究—比較文化史的観点から一ー(仮題)』のための残された調査を遂_ 59 (Richard Stanley-Baker)

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