鹿島美術研究 年報第13号
87/110

⑱ 中国における薬師造像に関する基礎的研究研究者:女子美術大学助教授稲木吉中国において薬師信仰は南北朝時代から起こり,唐代に入って盛行を見たとされるが,時代を追って薬師,七仏薬師,十二神将などの各像や薬師経変相図などの像容,図様には様々なものが登場し,我が国ではその一部が薬師の図像として定着したようである。したがって我が国の薬師像研究の立場からも中国における薬師造像の実態,図像の変遷についてこれを明らかにしておく必要がある。とくに薬師像は唐以前においては通仏相で表されるなどして他の如来像と見分けが付きにくく,また敦燈220窟のように七仏薬師か過去七仏かで意見の分かれるものがあるなど,従来の研究はそうした図像の曖昧さが作用して充分な成果が得られていないように見受けられる。本研究は,文献面での研究に加えて,遺品についても限られた図版だけではなく,国内はもとより中国での実地調査等を通じて薬師図像の検証を行うことにより,中国における薬師造像の実態を正確に把握することを主たる目的とするものである。同時にこれまで問題とされてきた個々の遺品について,薬師か否かの判断材料を得ることも目的の一つにしたいと考えている。とくに薬師,七仏薬師,十二神将等の図像の変遷と成立に至るプロセスを解明することができれば,その成果は我が国の薬師像研究にも大いに寄与するものとなろう。⑲ 中尊寺金色堂堂内荘厳具に関する調査研究研究者:東京国立博物館学芸部法隆寺宝物室主任研究官加島1.意義・価値れに基づいた作品研究によって平安時代仏教工芸史上における堂内荘厳具の具体的一様相があきらかとなる。を加えることにより,同堂須弥埴造営経緯の問題の解決に工芸史,とくに金工史および漆工史の立場から寄与することを目的としている。(1) 本調査研究によって得られる金色堂堂内荘厳具に関する詳細な基礎的データとそ(2) 金色堂堂内荘厳具の工芸意匠の特色や制作技法を金色堂須弥壇と比較検討し考察勝-61-

元のページ  ../index.html#87

このブックを見る