鹿島美術研究 年報第13号
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@ 画像データベースの構築とその利用法研究者:東京大学大学院人文社会系研究科教務補佐員藤川美術館で開催される展覧会のカタログや,出版社から刊行される研究書籍に,ある程度の体裁の統ーがあるように,コンピュータ上の画像データベースにも,標準的なフォーマットが試行錯誤され,やがて一定のガイドラインとなって広く認知,準拠されるようになると考えます。しかし,現段階で広く見られる画像データベースの索引法は,美術作品を例にとるなら,作家名,作品名,制作年,素材,サイズなど,従来慣例としてきた分類項目の設定にとどまるものが多く,書籍と違って,ぱらぱらとページをめくることによって,偶然発見したり,以前見た記憶をたどることによって,目的の対象にたどりつくという作業がほとんど困難なモニター画面上では,せっかく入力した画像も,二度と利用されることのないデッドストックとなる危険性を大きく牢んでいると指摘できます。このような資料のデジタル化にともなう死蔵化の問題は,データベース構想の段階で,活用法が十分に検討されないまま,単にニュートラルな分類法が適用されている点に原因があり,具体的な目的に即したフォーマットを作成し,研究者の方法論に合ったデータ整理法を,個々のデータベースに反映させることで解決されると考えられます。大学の先生方が,研究を発展させていく過程で形成されてきた諸資料間の体系こそが,各データヘの具体性のある序列の割り振りであり,そうした具体的な序列づけこそが,他分野から欲しい資料へ到達する際の道標や筋道となることは疑いありません。こうして特殊化したデータベースを,相互に関連づけてネットワーク上での利用法を探る本研究は,大学間での情報交流を活性化し,さらに市民大学としてキャンパスの枠組みを越えた広範な利用者層へ,知的情報に対するアクセスと参照を可能にするものです。また,特に美術史学をサンプル・ケースとしたデータベースの構築は,美術館同士の間での所蔵作品資料の相互交流への応用性も高いと予想され,充分に必要性と意義のある研究であると考えます。70 -哲

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