⑫ 1920, 30年代「朝鮮」の近代美術ー一「鮮展」入選作を中心として一一研究者:成城大学大学院美学美術史専攻博士課程後期金明治以後の日本の美術は西欧の美術の動向,思想,概念,様式,技法,画材などを範としそこにみずからを一元化する努力の道をたどってきた。ここに近代日本の美術が否応なくかかえこまなければならなかった特有の構造が認められると言える。本来独自の美術を有しながらも圧倒的な西欧化の波のなかで自分とは異なる美術に身をゆだねていかなければならなかったということがこの葛藤の構造をもたらしたのである。そして,このような矛盾的状況は韓国の近代および現代美術史でも全く同じように見られるものでありこれこそ我々の美術の固有性を作り上げている本体である。韓国の美術史学界でも近年,近・現代美術史に対する研究の必要性を求める声が高まりつつあるが,まだ充分な研究はおこなわれていない。それにはそもそも韓国の近代という時代が日本による植民地支配時代とほぼ同じ時期に当るということも研究を進めていく上でひとつの難点としてあげられよう。しかし研究者の考えとしてはこの点が他の地域と時代の美術史には存在しない特殊な状況であり研究されるべき価値を持っていると思う。それにもかかわらず,韓国からこの時代の美術史の研究のため日本への留学を目指すものはまだ少ない。美術史と言うとまず西欧での修学が優先されているし日本での美術史研究は古美術の分野に限られているというのが現状である。しかし研究者は1910年代からはじまる近代美術の中にこそ二つの文化のかよいあう類まれな独特の姿が隠されていると信じている。そこから生じて来る造形的特徴,様式の変化を深く具体的に研究し,我々の文脈に戻った近・現代美術の本質を語り直してみたいという思いはそのままこの研究の構想理由につながる。⑬ 日本の美術館における作品保存のための環境管理について研究者:愛知県美術館保存担当学芸員長屋莱津子下記の理由で,メトロポリタン美術館における現状調査を行いたい。0メトロポリタン美術館は,120万点にも及ぶ多彩な所蔵作品を保存管理する美術館である。日本の美術館とは規模の違いこそあれ,多様な技法材料の作品を扱うという現実的な問題点に共通点がある。さらにアメリカの美術館に共通して言える事では恵-71 -
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