鹿島美術研究 年報第13号
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⑮ テニアン・ボイオティアン・グループのピトスの図像研究研究者:大阪大学大学院文学研究科博士後期課程曽川八朗アルカイック時代の図像の基本的な解説書としては,K.SchefoldのMythand る古典文献との対応から,アルカイック時代の図像の意味を解説している。テニアン・ボイオティアン・グループのピトスも,その中でいくつか取り上げられている。しかし,その解説は,古典文献との対応が強引で再考の余地があると考える。そこで,それらの図像の意味を問い直したい。Schefoldの著作は,ホメロスをはじめとする古典文献がいかに図像として表されているかという点に関心があり,テニアン・ボイオティアン・グループの図像をすべては取り上げていない。そこで,このグループの作品の写真をなるべく多く収集し,検討を加えグループ全体として図像にどのような特色があるかということを考察する。さらに,初期アルカイックの他の地域の作品と比べることによって,テニアン・ボイオティアン・グループの特質を考え,初期アルカイックの図像の問題全体を考える第一歩としたい。⑯ 奈良・薬師寺蔵(重文)光背(残欠)文様の検討一一大安寺釈迦像を視野に入れて一一研究者:東海女子大学文学部助教授藤澤隆子意義日本彫刻史,特にその様式史は現存遺例で組み立てられている。もちろん現存遺例で組み立てるのが正当な方法でありそれ以外に方法はないであろう。しかし7C■8Cに造立された彫刻のすべてが現存するのではなく,むしろ現在では失われて眼にすることができない彫刻のほうがはるかに多い。しかもそれらは少なくとも平安時代後半まで伝存し,人びとに観賞され,仏師の造立に影響を与えてきたのである。したがって現存しない仏像についてもなんらかの手がかりを求めて可能な限り形制・様式等の復原を試みることによって,彫刻史を深めることが必要と思われる。大安寺釈迦像は現存しない。しかし日本彫刻史においては初唐様式を体現した初例と考えられ看過することのできない像なのである。Legend in Early Greek A rtが挙げられる。そこでは,ホメロスの叙事詩を中心とす-73-

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