ことを中心に,近世初期風俗画における図様継承の意味を明らかにすることを目的とする。⑫ J.M. W. Turnerの作品における蒸気船のイメージについての考察研究者:大阪大学大学院文学研究科博士課程岡本弘毅研究者がターナーの作品の中で蒸気船という極めて個別的なテーマに着目するのは,このモティーフが,彼の中期以降の作品において重要な意味をもっていると考えるからである。言うまでもなく蒸気船は産業革命最大の発明のひとつであるが,ターナーはこれを絵画作品のなかにいちはやく描き出した画家の一人である。それは最初地誌的風景の水彩画の中に控え目に表されるが,しだいにその主要モティーフとなってゆく。また,ターナー後期を代表する油彩画の中にも蒸気船が大きな位置を占めるものが幾つか制作された。これらの作品を系統的かつ詳細に分析することによって,ターナー後期作品に通底する主題性を捉え直すことができよう。また,ターナーの後期作品は様式的にも,当時他に類を見ない独創性(ローレンス・ゴーイング指摘するところの,抽象表現主義絵画との類縁性など)を示しているが,そうした様式の形成のなかで,蒸気船というテーマの追求が如何なる意味を持っていたかを検証したい。これは,一人ターナーの問題であるにとどまらず,19世紀イギリス絵画,ひいてはモダニズム美術史を再考するうえでも大きな示唆を与えてくれると考えられる。なお,本研究は2年後に提出予定の博士論文執筆のための基礎研究となる。⑲ 帆足杏雨の研究ー一戸次帆足家伝来作品を中心に_研究者:大分市教育委員会美術館建設準備室学芸員野田菜生子豊後国臼杵領戸次市組の庄屋であった帆足家は,田能村竹田の有力なパトロンであり,竹田の後継者の一人として活躍した帆足杏雨を一族から出すなど,江戸時代後期の地方富裕階級として豊後地方の文化の中心的担い手となった家であり,当時から多くの古書画を収集し今日にまで伝えている。1969年の「暗香疎影図」に加え,新たに点の田能村竹田作品の他にも,豊後南画と呼ばれる豊後地方の文人画をはじめ,狩野-77 1994年「帆足家伝来田能村竹田関係資料」として重要文化財に追加指定された26件45
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