鹿島美術研究 年報第14号
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300にのぼる一大コレクションである。派・円山派・土佐派などの江戸後期の美術や,将来された中国明清書画を含む件数約しかし,竹田関係資料の一部を除き,これらの美術資料の殆どが未整理・未紹介のままで,本格的な調査研究は少ない。この帆足家のコレクションの調査による基礎データの集梢,比較分析は豊後の近世から近代の美術の流れをより明確にしていく中で欠くことのできぬものであり,又,ある意味で別の側面からわが国の近世近代美術史の展開に新たな知見を発掘できる可能性も,十分考えられる。本コレクション中の帆足杏雨の作品群は,竹田の活躍した文人画隆盛期から,明治時代の衰退期までを生きた杏雨のほぼ全生涯にわたるものであり,いわゆる豊後南画の展開の上で非常に重要な,そしてわが国文人画史上にも新たな位置付けを試みなければならない充実した画内容を示している。杏雨については,1984年に大分県立芸術会館で開催された「帆足杏雨展」の際に,宗像健一氏を中心に初めてその研究基礎が築かれたが,それ以後に確認された帆足家所蔵の作品資料や各地に分蔵されている作品,史資料の調査によって,研究を発展させる余地が残されていると思われる。本調査研究を通し,帆足杏雨の画業をより明らかなものにし,田能村竹田及び周辺に存在した文人に関する新たな発見,更にはわが国文人画史の一断面として,いわゆる豊後南画発展の地域的特色や或いは九州地方における文化普及・流通の一側面をも提示できると思われる。調査研究の構想としては,①帆足杏雨の作品目録の作成,②画風変遷の分析,③田能村竹田との関係,その影靱の考察,④周辺文人との交友,その影聾の考察,⑤文人画史上における位置付け,再評価を行う,というものである。尚,帆足家伝来品については,1996年度大分市が一括して購入,寄贈を受けるのを機に,年次における研究の重点項目と設定し継続調査を行うこととする。⑭ レオナルド・ダ・ヴィンチの「人体比例論」研究研究者:札幌市立高等専門学校助教授向川惣一人体比例理論は西洋建築史上,古代ギリシャの神殿建築から近代建築に至るまで建築の平面プランとエレベーションを決定するものとして多大な影聾を与えている。中でも古代ローマの建築家ウィトルウィウスの記した『建築十書』に示されたものは,-78-

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