イタリアルネッサンスにおける「芸術論」の形成の契機となっている。本研究ではレオナルド・ダ・ヴィンチの人体比例論について,ウィトルウィウス解釈の数学的基礎づけを行なうことで,彼の芸術理論形成の背景を明らかにすることを目的としている。レオナルドの「絵画論」を含め彼の芸術理論は,建築史のみならず,芸術史,科学史の面でも後世に多大な影響を与えていることは良く知られているが,彼の「人体権衡図」におけるウィトルウィウス的な人間像の解釈の基盤となった数学的面は余り知られていない。特に近年におけるレオナルドの手稿のファクシミリ版の出版においても,この分野の再検討は不十分なままに残されている。この研究から従来,彼の自然観察によって形成されたとされるレオナルドの人体比例理論の定説を書き換えることが出来る。レオナルドの芸術理論形成におけるウィトルウィウスの受容とその影榔を調査研究することで,彼のリテラルな遺産である手稿そのものの相互の関連づけが出来るようになるものと考えている。-79
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