鹿島美術研究 年報第14号
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高階秀爾・選考委員の選考理由説明:くて,それぞれが大変力のこもった論文になっておりまして,これから助成をお受けになる方も,その成果をいずれ発表していただくことになるわけでございまして,私どもとしても大変期待しております。今回の第3回鹿島美術財団賞は,この『脆島美術研究』第12号に発表されました43編の助成結果の報告の中から大変に厳しい審査を経て決定されました。大変優れた成果が多かったものですから審査も難航いたしましたが,最終的な結果といたしまして,2名の方に財団賞を差し上げることになりました。お名前の五十音順で申し上げますが,東京大学大学院人文科学研究科の黒岩三恵さんの『フランス15世紀前半の透明釉七宝工芸』,それから文化庁文化財保護部美術工芸課文化財調査官の根立研介さんの『中世禅宗僧侶肖像彫刻の造像に関する研究』,この2編でございます。その内容及び評価につきまして,選考委員会で,いろいろ議論を重ねた結果,全員一致で,このお二人に財団賞を差し上げることになりました。次に,全員の評価を基にいたしまして,担当の委員が執筆いたしました評価をお読みいたします。最初は,『フランス15世紀前半の透明釉七宝工芸』,黒岩三恵さんの研究です。「西洋ゴシック時代の後期においては,金または銀の表面に浅い浮き彫りを施し,その上に透明の七宝釉を掛けた透明釉七宝工芸がアルプスの北と南において流行し,高度に洗練された成果を見せた。黒岩三恵氏の『フランス15世紀前半の透明釉七宝工芸』の研究は,14世紀末から15世紀前半に掛けて,パリを中心とする北フランスで製作された七宝作品を対象とするものである。今日までに伝えられている作例は,聖遺物箱を兼ねた小型の祭壇画や手発表されております。これは単なる報告ではな15 財団の選考委員を代表いたしまして,今回の第3回鹿島美術財団賞に関して,その結果と選考経過を申し上げます。ただいま文化庁の西沢文化部長からもご紹介ございましたが,この鹿島美術財団が毎年行っております美術に関する研究助成の結果が,毎年刊行されている『鹿島美術研究』という,大変部厚い研究報告

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