鹿島美術研究 年報第14号
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0泉湧寺1北京律⑩ 高麗時代菩薩形像の形式研究ー一日本に伝わる作例を中心に一研究者:鎌倉国宝館学芸員内藤浩之高麗時代の仏教彫刻史に関する研究は,「研究の実施状況」でも述べたように,個別作例研究が韓国と日本でそれぞれに伝わる作例の中だけで行われているのが現状である。従って,両国に伝わる作例の包括的な比較検討・位置付け作業が急務であると考えられる。こうした状況のもと,本研究では日本に伝わる菩薩形像の実地調査により基礎的データを作成し,それを踏まえて韓国に伝存する作例との比較を行い,高麗仏教彫刻の様式ならびに各作例の位置付けを試みる。その上で,銘文等により伝来が判然とするものについては,文献考証により制作地及び制作背景についても考察し,従来あまり論及されることのなかった様式の地域性という視点を加えることで,より立体的な麓仏教彫刻史研究に寄与しうると考える。さらに,高麗仏教彫刻を考える際に重要な点として,中国の様式の受容ならびに変容の問題があろう。本研究では直接の考察対象とはしないが,その影響関係は高麗彫刻の様式において大きな位置を占めると思われる。ひるがえって,同時期の日本の彫刻においても宋風受容の問題があり,ここに中世東アジア彫刻史における普遍的様式の有無という問題が浮かび,新たな視点を提供することになる。本研究はそうした考察のための不可欠な一段階となるはずである。⑪ 頂相形式を有する律宗祖師像の研究研究者:早稲田大学大学院文学研究科博士課程頂相形式で鎌倉から室町にかけて制作された律宗祖師の画像は,管見では2南都律0西大寺0唐招提寺南山律師像一幅,良遍上人像一幅南山,大智律師像(俊窃将来の宋画)各一幅,同寺開山俊初律師像一幅南山,大智律師像,各二幅計四幅,叡尊像二幅,忍性像一幅場まゆみ-44 _

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