鹿島美術研究 年報第14号
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⑮ 中国・山東省における隋様式の成立研究者:早稲田大学大学院文学研究科博士課程村松哲文中国・山東省における仏教彫刻に関する研究は近年になり幾つかの論文・報告書が提出されるようになった。ただし,これらはここの石窟に表現された図像学的テーマや様式伝播の一通過地点として扱われ,しっかりとした山東省に残る彫刻作品の様式について論じたものではなかった。その為に朝鮮半島の彫刻作品と比較しても明確な解答がでず,様式伝播の解明をかえって困難なものにしている。あるいは山東様式が南朝の影聾を受けたものか,北朝独自のものであるかといった中国国内の様式の伝わり方,影靱関係という問題も決着をみない状況にある。こうした問題はひとえに中国各地域に残る作品にいえることであるが,あまりに様式の伝播や影聾といった美術史学の“比較”といった作業が早急に行われすぎたということに問題がある。本来,各地域の宗教的あるいは社会的特性や作品個々の精緻な様式検討が行われなければならない。山東省は文献史料から様式伝播を考える上で重要な地域であることは明瞭である。そして幸い石窟に残る彫刻,出土した石仏・金銅仏もその地域の特性を語る上で量的にも十分であるといえる。この山東省に残る彫刻作品の個々の特色を浮び上がらせることにより,これまで漠然としか論ずることのできなかった「山東様式の成立」「山東省と朝鮮半島との関係」が明確になるはずである。具体的には山東省各石窟の彫刻作品のどの仏像とどの仏像が同時期か分類し,前後関係を明らかにし,あるいは各部分の比較,眼・鼻・耳といった細部まで山東省内でどのような変化をするか確かめる作業も必要であろう。これまで前人未踏であった中国特定地域の徹底した実物研究を行うことにより,中国彫刻史の新たなる局面を切り開く有意義な研究を成し遂げたいと考えている。⑯ フランスの新都市整備におけるパプリック・アート事業の研究研究者:宮城教育大学助教授新田秀樹近年,日本でも活発化しているパプリック・アート事業が欧米の事例をモデルにしていることは明白であるが,それらのモデルの制度面に関する正確な情報が日本のパプリック・アート関係者の間で共有のものとなっているとはいいがた<,事業実践の48 -

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