③ 貞応3年(1224)四天王寺絵堂九品来迎図現存していないため,その内容について,源豊宗説と平田寛説が対立している。その色紙形に付せられた往生伝を典拠とした和歌と漢詩をてがかりに図像などの歴史性を解明する。④ 瀧上寺本九品来迎図一平安から鎌倉での変化鎌倉末期の状況をとらえ,場と宗教的環境の2つの変化を論ずる。⑰ パオロ・ジョーヴィオのコモの「Museo」に関する研究研究者:跡見学園女子大学短期大学部専任講師西欧各国には,ロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーやウフィツィ美術館の肖像画収集など大規模な肖像画のコレクションが数多く存在する。ジョーヴィオのコモの「Museo」は1536■43年頃に形成されたとされ,この種の収集としてきわめて早い時期のものである。現在ウフィツィ美術館にあるメディチ家による肖像画収集も,1552年にトスカーナ大公コジモー世が,ジョーヴィオの「Museo」に人を派遣して模写せしめたものをもとにしているという。しかし,このような重要性にもかかわらず,当該収集に関する研究は未だに充分になされてきたとは言えないのが現状である。研究者の計画する調査・研究は,西欧の肖像画収集の歴史における空白地帯ともうべき初期の収集の実態を明らかにし,さらにジョーヴィオの美術史上のもう一つの重要な業績である『戦いと愛の標章』と当該収集の関連を考察することを目的とするものであり,その研究意義は大きいと思われる。さらに,この調査研究を通じて,ジョーヴィオの行ったような肖像画の収集と初期ルネサンス以来行われていた「著名人連作画」との関わりの有無が明らかになる可能性もあり,歴史的・地理的により幅広い範囲を視野にいれた研究に発展する可能性も期待されよう。-58 澤京子
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