⑲ 景徳鎮官窯址出土陶磁片の研究研究者:側)たましん地域文化財団たましん歴史美術館景徳鎮は明・清時代の中国における代表的陶磁生産地で,その時代の中国陶磁史は景徳鎮一窯の歴史として語られる。他の窯場の衰退にもよるが,またその衰退をもたらしたのが景徳鎖の製品の優秀さと生産力によるものと見ることができる。そのなかで主導的役割を果たしたのが官窯である。したがって明時代の陶磁史において官窯の存在は極めて大きく,官窯の動向の解明が明時代の陶磁史解明の重要な要素となる。従来,わずかに残された文献と器物に記された官窯銘によって,現存する作品が整理されてきたが,官窯銘の記されなかった明初期の永楽,中期の正統・景泰・天順などの時期の作品は明らかではなく,不明の点が多かった。しかし,近年の景徳鎖での発掘によって得られた出土資料は,このような空白を埋め,より確かで精細な陶磁史の確立を約束し得るものと期待される。明時代の官窯は,成化年間までの前期と以後の後期に分けることができる。そして前期において官窯の技術の大略の枠組みが確立し,後期ではそれを継承し,細部に変化を加えて展開するように考えられる。したがって明時代前期の官窯の様態を把握することが,明時代官窯の全体像に対する歴史的考察にあたって最も重要となる。この度の調査では,長い明時代の官窯の歴史のなかでも,まず前期の展開をでき得る限り詳細に解明することに留意したい。そのために現地を実見し,発掘状況,出土状況を確認し,出土品の総体を把握した上で,さらに磁片の資料化を進めるための調査を行う。これにより明時代前期の景徳鎮官窯の実態がさらに明らかとなり,その上に明時代を通した官窯の歴史の確かな解明へと研究が展開することが期待できる。⑳ 敦燻莫高窟の弥勒経変相図の研究研究者:東邦音楽大学非常勤講師斎藤理恵子敦燈莫高窟において弥勒経変相図は阿弥陀経変相図や法華経変相図とならんで数多くみられる変相図であり,敦燈壁画の主題構成やその思想的背景を考察するうえで弥勒経変相図の研究は不可欠のものといえる。-60 -副館長中澤富士雄
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