鹿島美術研究 年報第14号
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⑬ 「満洲」で活動した日本人画家(その制作時期・作品・団体についての調査)研究者:山梨県美術館学芸員飯野正仁旧「満洲」(現在の中国東北部)における日本人画家の制作活動のありよう,その作品(いかなる作品が描かれたか,その現存の有無,現存していない場合にはその図版検索を行う),また日本人画家が設立または参加した芸術家団体について調査を行い,今世紀初頭から戦前,戦中を含めて,国家主義が強い力をもった時代相のなかで芸術が何を要請されたのか,その要請に対して芸術家はいかに主体的に対処していったのかを明らかにすることを目的とする。戦前・戦中,日本の植民地となっていた朝鮮および台湾において,日本の文展に近い官展ともいうべき美術展覧会が,それぞれ日本の現地行政機関の主導のもとに開催・運営されていた。「朝鮮美術展」,「台湾美術展」である。両展には,多くの日本人画家が審査員として現地に渡航し,指導に当たっていた。「満洲国」においても同様に,いわゆる「満洲国美術展覧会」(満展)が,1937年から開かれ,5回まで開催されたが,その詳細はいまだ明らかとなっていない。本調査は,「満展」の全容を把握するための基礎作業とも言える。今日,国際化が課題となっているが,真の国際関係は相互の社会・歴史・国家制度への理解を基盤としなければならないことは明らかである。今後,日本はとりわけアジア諸国家との確固とした国際関係を結んでいく必要があるが,そのためには過去における日本のアジアにおける植民地支配についての歴史的確認作業が不可欠であり,本研究をとりわけ日中両国の相互理解の一助としたい。⑭ 大和絵系羅漢図に関する調査研究研究者:慶應義塾大学大学院博士課程白原由起子本研究でとりあげる,いわゆる大和絵系羅漢図は,中国からの図様の請来,あるいはまた平安時代における図様の受容のあり方やその展開を考えるうえに,重要な作品群である。東博本のみならず羅漢図諸本を系統的に理解することは,上代絵画史上の大きな課題といえよう。研究者は,この大和絵系羅漢図の諸相とその展開を究明することを目的とし,本助-70 -

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