ている。本研究もその一環ではあるが,ここでふたりの代表的武人画家を取り上げることにより,武人画の意味するもの,その特色といったものについても新たな視点からとらえなおしてみたい。⑭ 日本近代風景の研究ー絵画・挿絵・絵葉書における風景表現研究者:東京大学大学院人文杜会系研究科博士課程鈴木勝雄日本近代の風景観の研究は,ようやく端緒についたところだ。文学史・社会史・建築史など様々な学問領域がこの問題に取り組んでいる。昨今の環境意識の高まりの中で,人間と自然の関係を表わす「風景」が注目されるようになり,またその歴史的変遷が問われるようになったのである。風景とは,風土によって触発される審美的印象であり,多分に視覚に依存した現象であることから,イメージを扱う美術史学が,この問題に対して何らかの貢献ができると思われる。ところが,これまでの美術史学は,近代日本の風景画を論じる際,作家論あるいはタブロー中心の作品論に傾斜して,風景論というより大きな課題に対する問題意識に欠けていたと言わざるをえない。そこで本研究では,絵葉書,雑誌口絵等,従来美術史が副次的なものとして注意を払ってこなかった視覚資料を積極的に取り上げ,明治期に洋画家が発見した新しい風景の見方が大衆に流布していく過程に注目することにした。その結果,風景表現を芸術の領域から解放して,「旅」や「文学」と関連づけながら,より杜会的な観点で考察することが可能となるのだ。本研究は,風景の視覚的要素に重きを置いた美術史学の立場からの日本近代風景論として重要であるのはもちろんのこと,その一方で,風景絵葉書や雑誌の風景写真等に関する初めての包括的な論考としての価値も有していると思われる。⑮ 大安寺系仏像における唐文化の受容研究者:新潟産業大学人文学部助教授片岡直樹興福寺北円堂の木心乾漆四天王像は台座裏面の墨書銘により,もと大安寺像で,延暦10年に造立されたものであることがわかっている。申請者がとくに着目したいのは,_ 74 -
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