鹿島美術研究 年報第15号
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(4) 第13回研究発表会本年度の研究発表会は,1997年5月16日鹿島KIビル大会議室において,第4回鹿島美術財団賞授賞式,1997年度助成金贈呈式に引き続いて,財団賞受賞者2名と,それに次ぐ優秀者武蔵野美術大学非常勤講師・石井元章氏と長崎県立美術博物館学芸専門•徳山光氏の計4名の研究者より次の要旨の発表が行われた。研究発表者の発表要旨:① 「Gaku」--「純正美術」と応用美術の間で(第2回ヴェネツィア・ビエンナーレにおける日本美術)発表者:武蔵野美術大学非常勤講師石井元とするものである。当該ビエンナーレでは,日本美術に関して二つのイタリア語カタログが作られた。一つは展覧会の総カタログであり,9ページにわたって日本美術について説明している(以下『図説カタログ』と呼ぶ)。もう一方のカタログは,日本美術協会の出展作品が到着した後,協会添付の目録を基に作成された売価付きの総目録で,7月6日から8月12日までの間に作られたと考えられる(以下『協会目録』と呼ぶ)。日本美術協会の提出した目録では,全作品104点は35点の「絵画の部」と69点の「器物の部」に分けられているに過ぎないが,『協会目録』では「Gaku(quadri)額(絵)」「Kakemoni掛物」「金属木,象牙の彫刻」「陶磁器」「漆器」「その他」という6つのカテゴリーに分けられている。「絵画の部」の中には,1幅の紙本掛物と3幅の絹本掛物が含まれており,ヴェネッ1995年に開設百年を記念したヴェネツィア・ビエンナーレの歴史の中で,1897年の第2回に日本美術が出品されたことはあまり知られていない事実である。本発表では,純正美術と応用美術の議論にも焦点を当てながら,当該美術博覧会における日伊双方の要請,出品の意図を探り,その際,刺繍や押絵,染物が「Gaku(額)」という言葉で,絹本の絵画と同一の範疇に括られた現象の背景を明らかにしよう-15 -

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