ことはない。今回の調査研究ではハイン氏からの依頼に応じて窯地調査計画が立て得るか,その可能性を探るとともに,重要な貿易港マルタバンの調査の必要性を提示してより立体的なビルマ陶磁研究への道を切り開くことを目的としている。⑤ 宇賀弁財天像研究者:トロント大学大学院博士課程私の研究の目的は経典や聰像によって弁財天の図像の発展を追究することである。このプロジェクトの価値はその独創性や広さだと思う。弁財天のことについてはほとんど論文が書かれていないし,仏教学や民族学や美術史の関係する書物も少なく,その範囲あるいは内容の関点から見ると制限のある物である。優良な図録(例えば,サントリー美術館の1994『女神たちの日本』)や短い論説があるし,根立研介氏の弁財天と吉祥天についての『日本の美術』317号は優れているが,基礎的一般的話の導入である。従って広がりや豊さのある論文は全くないのである。大変時間のかかる非常に困難な調査ではあるが,各地の作例を実地に探査し,それらの比較検討によって,全体的な見方や理解が出来ると思う。日本固有の発展であるが,弁財天のインドの紀元前12世紀に遡る源から日本の現代的な尊像まで明らかに続いている一つの線が見えると思う。一番分かりやすいのは水の関係である。さらに,日本の弁財天像の漢訳された仏教経典に基づく図像的な特徴である。その経典はインドでサンスクリットで書かれた。その中に載せられている弁財天のことはヒンズー教経典に基づくのである。従って,弁財天の図像的である特徴をどうして持つか,どのように持つようになったかの特別な理由がある。私の調査研究によって,そのような点を明らかにしたいと思う。私の調査の他の意義ある点は,だれも見たことのないあるいは出版物に掲載されていない弁財天像を発表する点にある。⑥ 平櫛田中研究研究者:岡山県立美術館明治期,木彫は官設展への出品を許容され,また高村光雲などを教官に東京美術学キャサリン・ルドビック柳沢秀行-42 _
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