干剛注目すべき点である。こうした国内外の販路や款銘の問題を持つ正徳青花の混沌とした状況は,中期景徳鎮の様相の解明の鍵となると考えている。従来個別的な研究が中心であった明代陶磁の研究に,この中期の様相の解明をもって全体的な脈絡をつけようとする本研究の構想は,中国陶磁史研究上大きな意義を持つものと考えている。そして本助成による研究は,広がりのある課題を持つ研究である。この基礎研究をもとに申請者は,将来的に,明のみならず清朝へとつづく陶磁の展開にも研究を発展させてゆきたいと考えている。⑮ 春秋・戦国時代における桶について研究者:日本女子大学人間社会学部助教授彫刻理論の空白を埋める手段の一つは1面の研究である。桶は最も早く体系化した人体彫塑品であることから,早期桶に関する研究を行うことで,これまで漠然としていた学術的懸案が解決できよう。中国美術史分野において,1面に関する専門著書は少なく,まだ,その起源,変遷について究明がなされない状況にある。それに対し本研究が啓発を与え,桶研究が活性化することを願う。現在学術界において桶起源に対する解釈は,伝統的認識に依拠し,それにより,実際の桶の状況に則した合理的説明が不可能となっている。これを受け,研究者は今まで定説とされてきた論点とは異なる角度から研究を行い,孔子の桶に対する見解が桶誕生に関するものではないことを明白にする。さらに掘り下げた研究を進め,春秋・戦国時代の桶は,中国桶芸術の礎となったとの考えに基づき,広範囲に渡り,点在する資料の収集に努め,1面の属性を分析した上で,その表現内容およびモデルとされた対象物を明らかにする。さらに造形物への考察から,その時代の審美観を把握する。⑯ 石田幽汀の研究研究者:京都文化博物館学芸員野口一部の比較的よく知られた作品からの断片的な印象によって語られることの多かった石田幽汀という画家の画業の全体を復元しようとするのが本研究の第一の目的であ-58 -保田
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