入って伝世する作品には,箱書きとして名称を記されたものがある。これらには,刺身皿,なます皿などがあり,食膳での用途を示唆するものである。このような資料に触れ,さらに食膳を描いた絵画資料や,料理本などを目にする機会を得た際に,これらを結び付ける研究を考えた。その後,出光美術館の荒川正明氏の研究(「大皿の時代」出光美術館研究紀要第二号1996年)を知り,このような研究方法が決して不可能ではないことを確信した。資料をより多く収集し,データをまとめることで体系的な研究を試みることを構想した。⑪ 八大菩薩の成立と伝播に関する研究研究者:名古屋大学大学院博士後期課程本研究は,いまだ本格的な研究が行われていない八大菩薩の成立と伝播ルートを明らかにすることを目的とする。すなわち,インドにおける八大菩薩の図像の成立とアジア全域における図像の伝播ルート,図像の受容と変容などを具体的かつ実証的に跡づけ,その様相を明らかにしようと思う。このような体系的・系統的な八大菩薩の研究は従来ほとんど行われていない。特に,インドにおける八大菩薩の成立と中国への伝播,中国における八大菩薩の受容と変容の研究を重点的に行おうとするものである。それはインドをはじめ東南アジア,中国,韓国,日本などのアジア全地域における仏教美術,特に密教美術の伝播ルートを考えるうえでもその意義は極めて大きいであろう。本研究者が考えている全体的な構想は以下のとおりである。①インドに現存する八大菩薩,例えばエローラ第十ー・十二窟やオリッサ・ビハール両州に現存する八大菩薩を実地調査し,各作例における尊格の組みあわせや各図像の形式を分類し,インドにおける八大菩薩の成立とバリエーションを明らかにする。それによって,インドにおける八大菩薩の成立,すなわち各尊の選択基準や組合わせ,配置場所などが明確となり,インドにおける八大菩薩の成立とバリエーションが確認できるであろう。②ネルソンギャラリー所蔵木寵像や,安西楡林窟などに現存する八大菩薩を実地調査し,インドの作例との比較を通じて,中国における受容と変容を考える。すなわち,インドで成立した八大菩薩の各系統のうち,どの系統が中国に受容されたか,朴亨国-63-
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