C.ダールの画風の影響が指摘されてきた。ス(1789-1869)の著書で,ロマン派風景画の美術的理論書とされる『風景画に関する9つの書簡』(1815-1824執筆)は,その後半においてフリードリヒの転換期におけまたどのように変化していたかを明らかにしたいと思う。③善無畏や不空などによって漢訳された経典や文献を考察し,経軌における八大菩薩の性格や図像のバリエーションを考える。すなわち,経軌において確認できる善無畏系統の八大菩薩と不空系統の八大菩薩の図像における違い,すなわち各尊の組合わせや配置場所,持物などの違いを分類し,現存する八大菩薩の作例と比較考察することによって,インドと中国に現存する八大菩薩の伝播ルートを明らかにする。④以上の研究を総合的に整理し,アジアに現存する八大菩薩の総目録の作成,各作例の図像学的分類を行い,インドをはじめアジア全域における八大菩薩の成立と各形式の伝播ルートを明らかにする。⑫ C.D.フリードリヒの1820年前後における様式転換について一C.G.カールスの風景画論を手がかりとして一研究者:成城大学大学院文学研究科博士後期課程江川ドイツ・ロマン派の風景画家C.D.フリードリヒ(1774-1840)の作品の1820年前後における様式転換には,画面の諸要素に多様な展開が見られる。なかでも構図の緩み,色彩の豊かさ,ヴェドゥータに類する描写等,風景描写が,にわかに現実的な様相を帯びてくるいわゆる自然主義的転換に対しては,その要因として従来,主に友人J.C.一方で,同時期にフリードリヒと親交を深めた自然科学者兼画家のC.G.カールる自然主義的傾向に対応する内容を含んでいる。しかし,従来フリードリヒの風景画との関連については,主として前半の第5書簡までの「主観的心情の表現」を扱った部分ばかりが注目され,後半の第6書簡以降との関連までは十分に論議されてこなかった。そこで,私はフリードリヒの1820年前後の様式転換期に位置する自然主義的傾向を,このようなカールスの風景画論との関連で思想的に意味づける試みを意図した。また,フリードリヒの様式転換期の一要素として,私はフリードリヒの大気の形態描写に,イギリスのL.ハワード(1772-1864)の気象学の影響をすでに指摘した(『美学』189均-64-
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