鹿島美術研究 年報第16号
76/116

⑲ 岩佐派についての研究研究者:福井県立美術館学芸員戸田浩之研究者は「岩佐派のゆくえ」展(平成10年・福井県立美術館)の企画に携った関係から,これまでの又兵衛研究を基本としながら,更に工房など岩佐派全体の活動とその後の影響,さらには又兵衛没後の岩佐派の動向について探ろうとするものである。岩佐又兵衛は江戸初期を活躍期とする絵師であるが,彼が工房を主宰し,岩佐派という流派を基盤として活動したことは,現在大方の認識を得ている。しかしこれまでの岩佐派研究は,ともすれば又兵衛一人の研究に終始し,又兵衛以外の絵師や工房の活動など,岩佐派全体までの研究にまで進展しているとはいい難い。また又兵衛自身,「浮世又兵衛」の問題,および作品の制作年代・様式変遷など,資料の根本的不足から,未だ十分でない。そこで本研究ではまず,又兵衛印を有する作品や,又兵衛様式を顕著に示す作品間での表現上の違いや印章などを比較分類して,これまであいまいであった作品の編年や作品中に見られる工房制作のあり方などを考察する。次に又兵衛没後,息子勝重を中心とした福井における岩佐派画系,および又兵衛様式の継承,ならびに江戸や京都に存在したと考えられる又兵衛工房の行方や展開についても作品や文献を通して検証を行う。さらに無款の又兵衛風作品と岩佐派との関係についても研究を進めて行く。これら岩佐派の動向,そして活動内容を明らかにすることにより,これまで漠然と考えられてきた岩佐派について,その全容の解明を目指す。同時に又兵衛様式の後世に与えた影響など,江戸絵画における岩佐派の位置づけを行いたい。⑳ ニューヨーク近代美術館研究研究者:東京大学大学院人文社会系研究科博士課程鷲田めるろンに開館した。同じ年には,ドキュメンテーション部門や保存・修復部門が充実したゲティ・センターも開館。世界の美術館は変わりつつある。だが,日本は,といえば,多くの美術館は依然として従来のままであり,比較的先鋭的な試みを行ってきたセゾン美術館も閉館に追い込まれるなど,苦しい状況が続い1997年,グッゲンハイム美術館の世界戦略の大きな足跡となるビルバオ館がスペイ50 -

元のページ  ../index.html#76

このブックを見る