鹿島美術研究 年報第16号
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*この研究は今後提出される「15世紀フランドル絵画研究~画に現れた受容者のにする試みは,フランドル絵画研究に新たな視界を開くことになるのではないだろうか。研究の構想:①15世紀末の絵画に何故ロヒール様式の影響が濃かったのか,同じく巨匠として名高いヴァン・アイクではなくロヒールなのかを探るため,両者の様式比較を通じてその違いを明らかにする。具体的には,両者の聖母像,祭壇画の背景に描かれた風景を比較する。次に,15世紀末の絵画の傾向,特徴を取出し,ロヒール様式のどの点がこの時代の傾向に馴染みやすかったのかを見る。②群小画家たちの作品からロヒールタイプの聖母子を描いた作品,複数枚同じ構図,同じ背景,同じ人物像のある作品を取出し,その赤外線写真とX線写真から制作方法を分析する。③当時の絵画販売形態の調査。ブリュッセル,ブリュージュの場合。意向ー」と題して構想されたドクター論文の事例研究の一つとなる。⑫ タミル地域及びスリランカにおける『アーンドラ式仏陀像』の受容研究者:大阪大学文学部助手島田従来,仏教及び仏教美術の伝播の本流として注目され,主要な研究対象となってきたのは,ガンダーラやマトウラーといった北インド地域に端を発し,中央アジア,チベット,中国を経て日本に至るという,いわゆる北伝ルートであった。これに対し,南インドから海路を通じてスリランカや東南アジアヘ至るという,いわゆる南伝ルートがアジアの文化交流に果たした意義を積極的に評価しようとする動きが,考古学や人類学の分野では高まりつつある。実際インド文化が直接的に伝播し,その影響が現在でも最も強く残っているのはこの地域であり,インド文明のもつ世界史的意義というものを考えるとき,このルートの持つ重要性は決して看過しえるものではない。しかし美術史の立場から,この問題について論じた研究は,これまでほとんど行われていないのが現状である。本研究は美術史の最も基本的な研究手法である,現存する美術作例の詳細な分析を通じて,南伝ルートによる仏教の伝播を実証的に明らかにしようとするものである。この種の研究は広い地理的範囲を扱うものであるため,ともすればその調査や考察は-52 -明

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