⑱ 1920■1930年代のフランスにおける美術と文学との関係⑲ 15世紀イタリアのルネサンス建築に見られる光の礼賛についてインタラクテイヴな表現が見られることになる。研究者:大阪大学大学院文学研究科博士後期課程竹口浩司本研究は,バルテュスという一人の芸術家をめぐる言葉の分析ではあるが,決してそこに留まるものではない。バルテュスをあくまでも一つの具体例として,1920年代および1930年代の美術受容の状況を分析したいと考えている。そのため本研究は,美術史研究とはいえ,文学の領野とも大きく関わってくる。文芸批評家たちが美術というものとどのように関わっていたのかという問題を考察するためには,例えば,『新フランス評論』(N.R.F.)誌や,バルテュスの活動に直接に関わったアントナン・アルトーやジャン・ポーラン,ピエール・ジャン・ジューヴたちの著作を検討する必要がある。さらにもう一つの意義が認められる。美術と文学との対立という問題は,この時期の芸術受容の場の飛躍的な拡張という事態と恐らく深く関わっているのだが,バルテュスはそういった状況とも関連してくるように思えるのである。なぜなら,バルテュスは,フランス,スイス,ドイツ,イタリアと様々な国の人間と交友関係を持ち,そういった人々に支えられながら自らの活動を展開していたのだから。したがって,バルテュスのそういった芸術環境を洗い出すために,バルテュスを支えた人々の著作をつぶさに検討すると同時に,彼自身の手紙(メトロポリタン美術館資料室所蔵の他,ニューヨークの個人蔵のもの),あるは彼が1930年代に大きな影響を受けたとされる芸術家アンドレ・ドランの未出版論文『絵画芸術について』(パリ国立近代美術館資料室蔵)についても検討を加える。また,彼自身が模写することで多くを学んだと証言する絵画作品(ベルン歴史博物館のヨゼフ・ラインハルトの作品)を実際に見ることで,この模写によってバルテュスが何を得たのかを考察する。研究者:コロンビア大学大学院博士課程本論文は従来ウィットカウアー,ミロン,そしてグレイソンらといった建築史家た-73 -金
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