2.明治初期における美術産業とドレッサー3. ドレッサーのデザイン理論と,近代デザインに与えた影聘研究者:郡山市立美術館学芸員佐藤秀彦本研究の目的は大別して3つの内容をもつ。ドレッサーが手掛けたデザインは,広範囲に及んでいるが,その中でも陶磁器に焦点を絞り,文様,形態,素材,釉薬等について調査を行う。特に,ドレッサーの製品が生産された各地の美術館,製作会社に残る製品やデザイン資料,また日本から輸入された製品との関わりを調査する。ドレッサーの来日にあたり,内務卿の大久保利通,博覧会総裁の佐野常民らの政府首脳らが尽力した。当時の日本政府は,美術工芸品を輸出向けの重要な品として認識し,ドレッサーは,日本の手工業を視察し,その輸出的価値を評価するという任務を受けていた。ドレッサーば帰国後,日本の工芸品を輸入する商社を設立し,陶磁器などをイギリスに輸入するなど,日本との関わりを密にしている。イギリスにおけるジャポニスムに深い関わりを持ったドレッサーの業績を,明治初期の美術産業交流という新たな視点から検証する。ドレッサーは,製品の生産においてコストダウンのために,材料と製造工程の簡便化といった近代技術を積極的に導入している。日本ではほとんど未紹介であった彼のデザイン理論や方法論を調査し,ドレッサーがアーツ・アンド・クラフツ運動の実践者として,アール・ヌーヴォーやそれ以後の近代デザインに及ぽした影響げを明らかにする。3)散逸後の収蔵先における蒐集経緯の調査と記録(国外)⑳ クリストファー・ドレッサーとジャポニスム_陶磁器に見る日英交流_1.陶磁器におけるジャポニスムの影騨74 -
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