② 1999年度助成金贈呈式1999年度「美術に関する調査研究」助成者への助成金贈呈式は,第6回鹿島美術① 「俵屋宗達研究への新たな指標烏丸光廣の花押をめぐって」期』のローマ画壇とカラヴァッジオ」が財団賞,木俣元ー氏のシャルトル大聖堂のステンド・グラスにおける「『寄進者像』の再解釈」が次点に内定した。宮下氏は,カラヴァッジオの革新的な画風の確立に際して,マニエリスムからバロックヘの移行期の画家たちが少なからぬ影響を及ぽしたのではないかという新視点にたち,従来看過されがちだったその関係を図像学と様式の両面から実証している。丹念な現地調査と作品分析による優れた成果は,カラヴァッジオ研究に新しい問題提起をしており,財団賞の名に値するものとの結論に至った。木俣氏は,シャルトル大聖堂のステンド・グラスに表された一連の寄進者像が各種職業集団による寄進行為の表明であるという従来の解釈に疑問を投げかけ,それらはキリスト教の何らかの教義的理念の視覚化ではないかとの新解釈を提起しているが,この仮説には今後一層の実証と論考が期待される。財団賞授賞式に引き続いて行われ,選考委員を代表して,高階秀爾・国立西洋美術館長から1999年1月28日の助成者選考委員会における選考経過について説明があった後,原常務理事より助成者に対して助成金が贈呈された。(2) 研究発表会本年度の研究発表会は,1999年5月14日鹿島KIビル大会議室において,第6回鹿島美術財団賞授賞式ならびに1999年度「美術に関する調査研究」助成者への助成金贈呈式に引き続いて,財団賞受賞者とそれに次ぐ優秀者である笠嶋忠幸・出光美術館学芸と木俣元ー・名古屋大学文学部助教授の計4名の研究者より次の要旨の発表が行われた。研究発表者の発表要旨:発表者:出光美術館学芸員笠嶋忠烏丸光廣(1579■1638)は桃山時代を代表する宮廷歌人の一人であり,当時の能書家としても著名な人物である。彼はしばしば歌集の古写本や古い名竿と出会う好機を得ていたようで,今日伝存する書画作品には彼の極書(きわめがき/いわゆる鑑定書)14 -
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