や小団体の活動を調査研究するという各論的アプローチによって,それらの傾向の全体像を考察することを目的としています。現在の近代美術史研究は,こうした帰納的方法による調査研究が既に時期的にも必要な段階にきていると思われます。⑧ 糞掃衣を中心とした袈裟の研究研究者:総合研究大学院大学博士課程松村薫袈裟という衣は,思想が表現された衣であり,これほど思想が反映される衣服は,他に例を見ない。袈裟を研究することは,衣から「思想」を探ることであり,人間の身近にある「衣服」から「思想」を研究することは非常に意義のあることである。糞掃衣に関しては先行研究がないため,これまで経典上の解釈や現存遺品の調査などから糞掃衣という衣がいかなる衣であるかということを研究してきた。今後の研究として不浄な衣である糞掃衣の表現や解釈のされ方に「欲を捨てる」思想が,どう関わっているのかを研究したいと考えている。袈裟研究は,インド,中国,日本に関しては資料もあり,研究がなされてきているが,韓国における袈裟研究はほとんど行われていない。仏教美術全体としても韓国の仏教美術研究は,日本においてあまりなされていない。韓国は,インド→中国→朝鮮半島(韓国)→日本の仏教伝播の流れのなかにあり,重要な位置にあるので,日本の袈裟,糞掃衣の考え方を明らかにしていく上でも,また,仏教美術の流れを明らかにする上でも,韓国に於ける袈裟,糞掃衣を研究する必要がある。⑨ 旧石器時代マドレーヌ文化の洞窟壁画における動物像と〈記号〉の関係研究者:フランス国立パリ自然史博物館博士課程19世紀末にはじまる洞窟壁画の研究史のなかで,狩猟呪術説や多産呪術説などの洞窟美術の解釈は圧倒的に支持されてきた。その中で〈記号〉は狩猟道具や妊娠した動物といった具体的に諸説に照らし合わされた解釈に用いられた。今もって否定する確実な根拠もないが,旧石器時代美術はそれらの解釈だけでは納まりきらないほど,多様な表現からなる。1950年代以降,<記号〉はルロワ=グーランによって飛躍的に注目されるようになっ五十嵐ジャンヌ-4 0 -
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