⑪ フランク・ブラングイン研究―日英美術交流の一側面として—ことによって,フォーヴィスムがフランス美術の正統として承認されるに至った経緯を解明しようとする。従来の研究とは全く異なった視点からフォーヴィスムの歴史的意味にアプローチしようとする本研究は,フォーヴィスム研究に新たな地平をひらくのみならず,とかく低い評価しかあたえられてこなかった両大戦間の美術の再評価にもつながり,それだけに一層意義深いものに思われる。研究者:筑波大学大学院博士課程佐藤みちこフランク・ブラングインと日本との関わりについては,これまでブラングィンの作品そのものというよりむしろ,松方コレクションのアドヴァイザーとしての,人物への関心で研究されることが殆どであったと思われる。本研究では,そのような状況を踏まえた上で,ブラングインと日本近代美術との関わりを,より広い視野で捉えることを到達目標とする。まず第一に,ブラングィンの日本での受容について調査し,特に美術雑誌のブラングイン関連記事の目録,さらに,日本で展示された作品についてまとめた目録の二つを作成する必要があると思われる。それにより,日本の版画制作者に与えた影聾などが浮かび上がるであろうと思われる。そして,そういった受容に貢献した,情報源としての在英日本人留学生との交流についても調査を深める必要があり,ブラングインを囲む,画家・コレクターなどのつながりも,改めて明らかにしておきたい。以上の調査研究により,日英美術交流の一側面としてのブラングインの重要性が再確認できると思われる。そして,申請者と協力体制にある海外のプラングイン研究者に,その結果を提示することは,フランク・ブラングイン研究全体にとって,有意義なものとなるだろう。また,フランク・ブラングインと石橋和訓が中心となって,第一次大戦のベルギー難民のために開催した義捐金あつめのチャリティー「欧州大家絵画展覧会」(大正7年)について調査を深めることで,ブラングインを通した日本とベルギーの美術交流の知られざる一面が浮かび上がることに期待できる。42 _
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