鹿島美術研究 年報第17号
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⑲ 福島繁太郎のコレクションの研究2)旧フクシマ・コレクションは画廊やオークションでの購入作品と画家との2)在パリ時代のパリでの雑誌等や関係者への聞き取り調査による福島の事蹟研究者:山口県立美術館普及課長安井雄一郎目的:「フクシマ・コレクション」の全容解明とその意義に関する考察意義:1)旧フクシマ・コレクションの形成過程を検証することは,在パリ時代の福島の活動を検証することにほかならない。福島は,当時パリに留学していた日本人画家のパトロン的存在であった。したがってこの調査を通して彼らのパリでの実態解明に一部貢献できると考えられる。直接的交流のなかで入手した作品とで構成されている。したがって,そのコレクション形成過程の研究からは,日本人による美術観の在り方がみえてくるとともに当時のパリ美術界の動向も明らかにできると考えられる。画家との交流については,申請者はとくにルオーとの関係を重視したい。福島はルオーの世界的評価のきっかけを作ったといわれているが,福島のルオーとの親密な関係はルオー研究では殆ど言及されていないからである。3)「フクシマ・コレクション」が日本にもたらされた当時,同コレクションは多くの画家に影聾を与えたと言われる。たとえば同コレクションI中のルオー作品の難波田龍起に与えた影靱については,すでに指摘がなされている。したがって同コレクションの全容解明は,それが日本の画家に与えた影靱の解明にも繋がる。4)同コレクションは,戦中戦後のあいだに散逸していくことになったが,その一部は,ニューヨーク近代美術館,ハーヴァード大学付属フォッグ美術館,ロンドン・テートギャラリー,オランダのクレーラー・ミュラー国立美術館,スイスのティッセン,コレクションなど世界的に知られる美術館などに流出している。このことは同コレクションの質の高さを物語るものであり,それだけにその実態を明らかにすることは日本近代美術史にとってのみならず,国際的にも大きな意義があると考えられる。構想:1)雑誌文献等による関係記述の整理(国内外)調査(国外)-73

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