⑧ 魏晋南北朝時代壁画墓の研究(2) 「戦後史的側面」一原画制作に参加した美術家の作品や活動を検討し,戦後美術の動向の中で『こどものとも』を再考したい。また『こどものとも』に描かれた社会観やライフスタイル像などに一種の「戦後イメージ」を探り,時代の自画像としての絵画的な一面も明らかにしたい。研究者:神戸大学大学院文化学研究科博士課程壁画墓とは,墓室壁面に壁画が描かれている古墳で,中国古代における装飾古墳の一種類である。壁画墓は前漢中期に発生した。戦国時代から前漢時代にかけての吊圃と漆画が,その起源である。前漢中期から王芥時代にかけてのものは六基しか発見されなかったが,後漢中,晩期になると,その例は急激に増加する。魏晋時代には戦乱のために,壁画墓の数が減って,分布地も中原地区から東北,西北および西南など辺境地方に移っていったが,南北朝時代の晩期になると,河北,山東,山西河南および西北地区の寧夏,映西等の地域に大量に発見された。これらの壁画墓は隋唐壁画墓の原形になって,最も絢爛たる歴史段階である隋唐時代に辿っていた。こういった魏晋南北朝時代は,漢から隋唐へ変化する非常に重要な文化転換期であり,中国絵画論理と絵画体系を形成する重要な時期でもある。墓葬壁画は後世の改変をうけることなく残っており,当時の絵画美術の水準を反映する貴重なものである。また,鮮やかな彩色壁画はその時代の各民族,各階層の人達の権勢,風俗,生活をはじめ,宗教信仰や自然観,死生観などを伝えているといってよい。本研究の目的は,この魏晋南北朝時代の壁画墓の研究を通じて,中国古代絵圃論理と絵画体系を形成する全過程を明らかにすることにある。そこから,壁画墓の特徴,絵画の様態,死生観の実態,文化芸術交流の規律などを解明できると考える。こういった問題意識を持つにいたったのは,一つには,現在(2000年)までに発掘によって壁画の存在が確認される魏晋南北朝時代の墓葬は84基があり,未報告のために確認できない壁画墓もまだ多数あると思われるから,総合的に研究する格好の資料を得たこと,今ひとつには,現代的な交通手段と技術手段を利用して短期間に現地に赴き調査することが可能になったこと,さらに今一つには,カメラ技術とコンピューター技術を通じてデータベースを作成して全面的に解析が可能になったこと,などで_ 39 -柴生芳
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