の「紫式部日記絵巻」における人物像を考察すること,また物語ではなく,ノンフィクションを主題とする点において共通する「春日権現験記絵巻」との比較,さらに「一遍聖絵」との比較により,「紫式部日記絵巻」の画中における屋外空間の占める割合の増加とその意味を考察する。これらの作業はつくり絵というジャンルの変遷を明らかにする研究のための一つの段階として意義あるものであると考える。⑮ 古薩摩焼の成立とその展開研究者:根津美術館嘱託松村真希子薩摩焼は黒釉陶器と白色陶器,また江戸後期になってからの金襴手陶器など多様な製品を生産してきた。その中から今回取り上げた白色陶器の白薩摩焼は江戸時代から現代まで継続して生産された器種であるため,その変遷を明らかにすることで編年の検討が可能であると考える。この白薩摩焼ぱ江戸初期においては藩が直接生産に携わった上手の製品である。また鹿児島県外にも流通した器種であるため,陶磁考古学の研究資料として量的にも豊富で,調査が可能なやきものである。そこで,初期の作品群を調査検討し,薩摩焼きの中での位置づけと編年の考察を目的としたい。白いやきものは,江戸初期に肥前が白磁を完成したのと同じ時期に各地の窯で盛んに作られるようになった。匪児島県の白薩摩焼の生産もその一連の流れの中で生まれたやきものと考えている。そこで伝世品の白薩摩焼の胎土,釉薬,成形法,焼成技術などを詳細に調査し,これらに鹿児島県内の窯跡出土資料,匪児島県内外の消費地の出土遣物,近県の窯跡出土資料との比較検討を加え,研究を進めていく。将来的には黒釉陶器や金襴手の作品の調査研究にも編年を行ってゆくことを考えている。白薩摩焼の編年を通じて17世紀の薩摩焼き全体の編年を試み,さらに薩摩焼を日本陶磁史のなかに位置付けたい。⑯ 祇園祭礼図を中心とする祭礼図の研究研究者:京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程八反裕太郎祇園祭礼図は日本史,祭礼史などからのアプローチは盛んであるが,美術史の側かし,それぞれの窯の同定,-62
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