鹿島美術研究 年報第18号
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―1890年ー1920年代のフランスにおける身体表現とその視覚化の東西交流につい@ ロダンとオリエント・再考1909-1929』(セゾン美術館,1998年6月13日〜8月3日,ほか)の研究成果は非常に⑫ 古社寺の文化財調査—神道美術を中心として—研究者:静岡県立美術館学芸員エドワード・サイードの『オリエンタリズム』以来,西欧と非西欧をめぐるその実態調査,言説形成の状況分析と美術史(文化史)における意味についての研究は飛躍的に拡大し,その方法論も定着してきた観がある。ジャポニスムについての研究も同様である。しかし,従来の東西美術交流史研究の中で身体表現に焦点を当てたものは少なくないのではないだろうか。その意味で,近年20世紀初頭のパリでのロシア・バレエの展開と成功について,現在に残る視覚表現全般を網羅し,その意味を「西欧と非西欧の交換のプロセス」であると定義した『デイアギレフのバレエ・リュス展いと思われる。本研究は,ロダンという一人の芸術家を軸にその足跡をたどることを基本とするが,絵圃の分野ではジャポニスムやオリエンタリスムのピークはすでに去っていたと思われるフランス美術界で,さらにアヴァンギャルド芸術が台頭する当時のコンテクストにおいて,新たなモデルによって改めて身体芸術とその表現性に着目し,彫刻や素描の世界へそれを視覚化した彼の芸術の実質的な内容と影靱の大きさは実際にはどの程度であったか,またどのような意味をもつのかを考察しながら,併せて,1890-1920年代のフランスにおける身体表現の東西交流について研究の拡大をはかりたいと思う。すなわち,ロダンと非西欧の身体表現との関わりはモダニズムにおける身体性の見直しを促すものであろう。研究者:奈良国立博物館学芸課文部技官伊東哲夫日本独自の宗教文化ともいえる神仏習合の思想。その思想的背景のなかで作り出されてきた神道美術は,これまでは仏教思想的観点からの捉え方,すなわち垂迩美術として,仏教的な意義を中心とした調査や研究を基にした編年や体系付けが主流をなして―-68 南美

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