鹿島美術研究 年報第18号
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⑰ 盛唐山水画様式の研究_正倉院山水図と敦燻仏画をめぐって_研究者:京都大学大学院文学研究科博士課程西洋絵画において東洋の山水画にほぼ相当する風景画は,ルネサンス期以降ようやく登場してきたが,文献資料と画像資料を合わせてみれば,東洋の山水画は八世紀初めに一個のジャンルとして成立し,西洋のそれに比して数百年前も早く,注目される。八世紀における山水画の成立・出現の過程,そしてその初期的な発展・様式という問題は東洋山水画の原点といい,東洋絵画研究における非常に重要な問題であるのみならず,その後数百年の山水画史の展開に与えた影聾は極めて大きいと言える。盛唐時代は中国山水画の流れに,前代の魏晋南北朝の成果を受け続き,次の宋代,即ち,山水画の黄金時代が出現する前に,その重要な役割を果たしたとともに,決定的な時期となったといってよい。盛唐山水画の実相という問題を扱うには,主として以下の二方面の問題を着手しなければならない。(1)唐時代の書籍,殊に画論書・文集・雑記・詩文などの文献資料の記載に対する理解や解釈をより明らかにすることと,(2)現存作品,例えば,正倉院宝物(特に山水図・山水モチーフが描かれたもの),近年相前後して出土した唐墓の壁画・工芸品,敦崖石窟の壁画,仏画(絹画)などを中心に,系統的にその様式に対して考察を行う必要がある。一方,本研究は盛唐山水画の様式を研究テーマとし,継承関係あるいは様式比較を行うため,唐以前,つまり魏晋南北朝の文献資料と現存作品などにも触れる。主要な目的としては,まず制作年代が未だはっきりとされていないものに対して,様式分析による編年を通じて明らかにしていきた⑱ 池大雅の画業における室町水墨画の影響研究者:多摩美術大学非常勤講師大西池大雅は,その画風形成期において様々な流派・様式からの影響を受けている。その中で,室町水墨画はどのような位置を占めていたのかを解明することが本研究の目的である。その意義は一つには,大雅の画題選択方法やその解釈,画面構成や筆法といった画風・様式,制作背景等々における室町水墨画との比較考察を行うことで,これまで具-72 -白適銘し‘o

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