メージとテキストの両側面から作品を考察することにより,シュルレアリスム芸術とエルンスト芸術における解釈の新知見が期待される。現在,2つの問題設定を考えている。第一に,「地震」の主題がシュルレアリスムの文脈のなかにどのように位置づけられるか。第二に,エルンスト芸術における「地震」の主題がどのような意味をもち得るか。前者の問題は,「シュルレアリスムにおける自然の主題」としても発展しうると考える。後者に関しては,まず問題の糸口として「水平線と天体」のイメージに注目したい。というのもこのイメージは「地震」だけでなく,「海と天体」「湾岸流」「森と天体」の意味も付与されることがあるからだ。このことはすなわち,本研究が「地震」主題だけにはとどまらない,より大きな問題として発展しうることを示している。⑮ 常盤源二光長周辺制作絵巻物に関する研究研究者:東北大学大学院文学研究科博士後期課程12世紀後半に活躍した宮廷絵師である常盤源二光長の作風を具体的にして行くことは,同時代の絵巻物制作における宮廷絵師と絵仏師との作風の違いの解明に繋がると思われる。また,光長周辺制作絵巻物の光長真筆からの距離を明らかにすることは,各絵巻物の制作時期を考える材料ともなるであろう。ところで,光長周辺制作絵巻物の内,私が新たに光長周辺作の可能性を言及した「鳥獣人物戯画」甲巻は,拙稿において指摘しているように,描かれた内容の検討等から,神霊を慰撫する能力を期待し,神霊との良好な関係を結ぶために制作されたと考えられる。また,光長真筆であることがほぼ確実な「伴大納言絵巻」の制作目的については,五味文彦氏(『絵巻で読む中世』ちくま新書平成6年)によって「御霊の鎮魂」にあったとする説が示されており,更には「吉備大臣入唐絵巻」に描かれる吉備真備も御霊信仰の対象とされていたことが知られている。「年中行事絵巻」をはじめとして,光長に幾つもの絵巻物制作を命じたと考えられる後白河院については,岡田荘司氏(『平安時代の国家と祭祀』続群書類従完成会平成6年)らの先学によって,その熱狂的な信仰の営みや,保元の乱を経験した院が生涯に亙って怨霊の行方に過敏になっていたことが指摘されている。また,後白河院が今-75 -五月女晴恵
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