鹿島美術研究 年報第19号
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(7頁)だが,多いもので21頁,平均10.5頁となっている。今後,公平を期すために日的評価を塗り替える新鮮な視点を備え,更なる発展の期待できる研究として高く評価される。次に,河野元昭委員による近藤壮氏の選考理由を読み上げる。近藤壮「江戸時代中期の公家文化における画家の研究ー近衛家熙と『中山花木図』をめぐって一」18世紀後半,京都画壇は空前絶後のエネルギーに満ちた時代を迎えるが,その前半は一般に弛緩期であったと見なされている。本研究は近衛予楽院家煕を中心とする公家社会と交流しながら活動した画家たちに焦点を当てた。そして,その時期がけっして弛緩期などではなく,絵画史的に見て看過することのできないことを初めてかつ具体的に明らかにしたものである。まず「中山花木図」というこれまでほとんど無視されてきた作品に注目し,家煕のもとで創作を行った画家について整理を進め,家煕の絵画観をもくつきりと浮き上がらせる。このような家煕文化圏が,中国や琉球などの文化とも密接に結ばれていた事実を指摘し,さらに中国,琉球,薩摩京都へと展開する写生画の流れをも示唆する。豊かな独創性を示しつつ,江戸絵画史研究に新しい地平を開いたものとして,本年度の鹿島美術財団賞にもっともふさわしい研究と高く評価された。引き続き,財団賞授賞者に次ぐ優秀者だが,これには,日本・東洋および西洋美術の分野から,次の2名が選ばれた。一人は,東京都写真美術館学芸員笠原美智子氏「エイズと美術…エイズはいかに写真を変えたかーニコラス・ニクソンの作品を巡って」,もう一方は,東北大学大学院文学研究科博士課程(現・五島美術館芸員)谷口耕生氏「仏涅槃図の研究一高山寺本・浄教寺本を中心として一」である。本日の研究発表会では,財団賞受賞者2名と優秀者2名の方に発表をお願いした。最後に,選考に当たって気付いたことについて述べておきたいと思う。まず,選考対象となった報告書の頁数が714頁にもなり,量的にもかなり増えている。これは,形式を整え,内容を充実させるための結果かもしれないが,他方,本文・注,図版・表の扱いがまちまちで規定を越えるものも少なくない。ちなみに,規定では8000字も,規定を明記し,厳守することになった。(本文:注を含めて8000字以内,図版:-14 -

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