まで含めて,その「写真」の問題となったのである。この発表は,ニコラス・ニクソンの作品とその作品を巡って起きた論議を,彼の作品を詳細に検討するだけではなく,エイズを巡る社会政治的背景やマス・メデイアのエイズ表象を通して多角的に検証して,ジェン・チタ・グルーバーの言うところの「ニクソンの表象の正確さや公正さ,コミュニティにとって部外者である写真家がエイズと生きる人々を表象することの正当性」すなわち他者表象の問題を考えようとするものである。またそれは,90年代を通して起きた,エイズを巡るイメージの根本的な再編成について,すなわち「エイズがいかに写真を変えたか」という,大きなテーマについての第一章となるものである。② 「仏涅槃図の研究一高山寺本・浄教寺本を中心として一」発表者:閲五島美術館学芸員谷口耕生の刷新を行った,鎌倉前期の高僧・明恵房高弁の存在である。明恵については,宋代図像から影響を受けて鎌倉時代以降に流布した,第二形式とっているかによって,その写真の「解釈」さえ変わってしまうことが明らかになっている。今までのドキュメンタリー写真が採ってきた,全ての人を代表して何らかのイメージを発信するような特権性は無効にならざるを得なくなったのである。そこでは誰が誰を何のために誰に対していかに表象するかということが問題になる。写真家の立場やアイデンティティ,その写真がどのように社会の中で機能するか仏教寺院ではこの日に地域・宗派を問わず涅槃会が行われてきた。このため涅槃会の本尊とされる涅槃図の現存作例は,日本国内に限っても聰しい数にのぽる。とくに鎌倉時代以降,涅槃図の制作数は飛躍的に増大したことが窺えるが,その背景を考えるときクローズアップされてくるのが,熱烈な釈迦信仰に基づいて『四座講式』の著作などを通じて涅槃会二月十五日は釈迦の忌日とされており,古来より-16 -
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