詩歌はその中でも特に大きな位置を占め,「大和し美し」をはじめとする数多くの代表作の主題となっている。近現代詩から俳句,短歌,謡曲にいたるまで様々な形式の詩歌が取り上げられたそれらの作品は,しばしば新しい表現方法の試みや新しいモテイーフの開拓の場ともなっており,棟方の制作における詩歌の存在の重要性を示唆している。この調査研究では,詩歌を主題とする棟方の代表作における表現上の特色やその変化について子細に検証し,詩歌を主題とする作品が棟方の制作全体の中で果たした役割について明らかに出来るのではないかと考える。⑳ 中国・耀州窯青姿の系譜的研究研究者:愛知県陶磁資料館学芸員本研究は,耀州窯青姿に見られる意匠・技術の系譜と,中国の青姿発展史における耀)•I、l青姿の位置づけを明らかにすることを目的とする。耀州窯は,中国宋代の華北を代表する名窯の一つであり,そこで作られた青姿は,オリーブグリーンの美しい釉色と流麗な劃花文,繊細緻密な印花文などによって,古くから高い評価を得てきた。中国の青姿は,唐代以前には浙江省北部の越什l窯など華南地域を中心に発展してきたが,華北の映西省に所在する耀)•,,1窯では,唐代晩期頃から越州窯青姿の強い影響を受けた粗質の青姿の生産を開始し,五代には天青釉と呼ばれる美しい釉色をもった上質の青姿を作るようになった。さらに,五代末から北宋代初期に耀州窯独特のオリーブグリーン色の青姿を生み出し,華北における質の高い青姿生産を確立したのである。また,耀州窯青姿の意匠や技術は,周辺の窯にも影響を及ぼし,隣接する河南省では,多くの窯で耀州窯青姿を写した製品が生産されたほか,汝窯青姿に釉色や焼成技術などで強い影響を及ぼしている。汝窯は,北宋代に官窯の位置を占めた名窯で,汝窯青姿は中国陶姿史上最高と評価されている。汝窯の天青色の釉色や窯詰め技法には,五代・耀州窯の影響が認められており,汝窯青姿の確立に耀州窯が重要な役割を果たしたことが推測される。汝窯は13世紀初頭の金の侵入と北宋王朝の滅亡により,官窯タイプの青姿の生産をとなった詩歌の選択方法や表現方法について,また,森達也-47-
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