岨)モンゴル近代美術の基礎的研究を及ぽしたと推測される,13世紀の第3四半世紀にパリで成立したフランス俗語版聖書の一種『十三世紀フランス語聖書』の,現存写本作品の基本データならびに挿絵の写真資料の公開は急務であろう。転換期の13世紀における聖書図像のこうした側面に光を当てることにより,中世後期全般にわたる聖書図像の多様な展開を,より緻密に把握することが可能となると思われる。⑳ 美術評論家なかがわ・つかさの活動を通してみた昭和30年代の札幌の美術研究者:財団法人札幌市芸術文化財団芸術の森美術館学芸普及係長札幌の美術史は,実作品を中心とした美術館での検証のほか,自らの体験と資料をもとに美術評論家によって総括的に綴られてきた。また公募展団体の沿革などを個別の情報としてまとめたものもある。その一方でひとつの時代を掘り下げた研究は少なく,新たな視点から再評価を試みる余地は多分に残されている。本研究は,作家や作家グループの活動からではなく,美術評論家という立場からその時代の美術の動向に大きくかかわった人物の活動を通して昭和30年代を見ることによって,これまでとはちがった側面が見えてくると思われる。特に,公募展や画廊など,現在の札幌の美術シーンの原型ともいえるものがほぼ形づくられた昭和30年代を振りかえることにより,現在につながるさまざまな動きがクローズアップされてくると思われる。関係者が高齢になりつつあり,直接聴取できるうちの調査が望まれる。なお,この研究成果をもとに,実作品と批評文を並べて展示するなど,評論家が札幌の美術に大きな影響を与えた昭和30年代を紹介する展覧会を検討していきたい。研究者:福岡アジア美術館学芸課嘱託(資料管理相談員)山木裕子モンゴル近代美術の研究は,モンゴル国内でもほぽ手つかずの状態であるため,モンゴル国内にある作品の所在やデータを明らかにし,資料化することがまず第1歩となると考える。まずまとまって存在する芸術家組合の所蔵品の基礎的なデータベースづくりからはじめたい。まず芸術家組合の1000点以上と予想される所蔵品のうち,500-73 _ 吉崎元章
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