の中で、とくに柄香炉をもつ僧形像に担わされた役割を解明する上でも、また平安時代初期にあたる弘仁時代の南円堂に、なぜ供養僧形像が造立・安置されたのかという、造立事情を探る上でも、極めて大きな価値・意義を有していると思われる。そこで、本研究では、中国・日本の仏教関連の文献史料によって、柄香炉をもつ供養像の意味を検討すると同時に、供養僧形像の作例がのこる中国の石窟寺院（龍門、霊泉寺等）において実地調査を行い、供養僧形像の表現はもちろんのこと、石窟寺院において柄香炉をもつ供養僧形像が表されている位置や、本尊と供養僧形像との関係性を検討し、併せて供養僧形像が石窟寺院内で果たす役割についても考察する。以上の文献と図像による総合的研究の成果をふまえて、創建当初の南円堂に供養僧形像が安置された理由、すなわち供養僧形像の造立目的を解明することが本研究の目的である。さらに、鎌倉再興の法相六祖像の性格や彫刻史の上での位置づけを問い直し、法相六祖像に従来にない新しい意味を見出してみたい。⑮ 亀井至ー、竹二郎兄弟の日本近代美術史における位置研究者：郡山市教育委員会文化課主査兼学芸員中山恵理亀井至ーは版画工房・玄々堂の中心的な画家として一部の研究者のあいだでは、よく知られているが、版画作品ばかりでなくタブロー等もいくつか個別に所蔵されるもののそれらが一堂に展示されることはこれまでなく、画家としての全貌を捉えることは難しい。一方、弟の竹二郎は、近年になって郡山市立美術館で油彩による東海道の各宿場を描いた風景連作が収蔵され、それは美術史上においても記憶されるべき佳作であると思われるが、いまだ一般にはほとんど知られていないといえるだろう。郡山市立美術館に今春まで所属していた申請者は、これまでもこの竹二郎の作品を中心に亀井兄弟について調査・研究を続けてきた。その際、亀井兄弟や彼らの作品に対する認識及び評価の低さを実感し、より正確な情報によってそうした現状が必ずや改め得る確信をもち、またそうすべき必要性を痛感した。本研究は、そういった認識に基づき、まずは亀井兄弟の作品の整理及びデータ化をはかるものである。特に美人画の名手として知られた至ーの作品の考察によって、伝統的な表現から近代の人間像へと移り変わる経緯を知ることができると期待される。-79 -
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