鹿島美術研究 年報第20号
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西洋美術分野から、大阪大学大学院文学研究科博士課程大野陽子氏、研究主題は「対抗宗教改革期におけるヴァラッロのサクロ・モンテ」、日本・東洋美術分野から、東北大学大学院文学研究科博士課程瀬谷貴之氏、研究主題は「貞慶と重源をめぐる美術作品の調査研究一釈迦・舎利信仰と宋風受容を中心に一」である。受賞者に次ぐ優秀者には、西洋および日本東洋美術分野から次の3名が候補者として選ばれた。西洋美術分野から、早稲田大学大学院文学研究科博士課程瀧口美香氏、研究主題は「福音書記者シンボルの東西」、日本・東洋美術分野から、柳川藩立花家資料室植野かおり氏、研究主題は「江戸時代火事絵巻研究」、ポーラ美術館設立準備室学芸員佐藤みちこ氏、研究主題は「フランク・ブラングイン研究一日英美術交流の一側面として一」である。財団賞の選考理由については、小佐野重利委員および有賀祥隆委員がまとめましたので、それを読み上げることとする。大野陽子「対抗宗教改革期におけるヴァラッロのサクロ・モンテ」ヨーロッパでは中世以来、聖地や、ローマおよびサンティアゴ・デ・コンポステラなど、イエス・キリストやキリスト教諸聖人に縁ある聖なる地への巡礼が絶えなかった。しかし、巡礼にでるには生死を賭ける覚悟はもちろんのこと、長旅の路銀を工面しなければならず、庶民には大変なことであった。一方、貴顕が長い歳月を要する巡礼に出かけるのはなかなかむずかしく、代理巡礼なる慣行も容認された。大野さんが研究テーマに取り上げたヴァラッロのサクロ・モンテは、15世紀末の創設当初、エルサレム巡礼に赴けない人々のためにナザレ、ベッレヘム、エルサレムの聖跡をヴァラッロの山頂に再現したミニアチュアの代替巡礼地であった。それみ、美術史研究に新しい地平を開くものばかりだったので、選考は困難をきわめ、二次、三次選考と進むにしたがい、委員の間でさらに白熱した議論が繰り返された。その結果、第9回鹿島美術財団賞とそれに次ぐ優秀者を内定し、本年3月21日に開催された閲鹿島美術財団理事会において承認された。財団賞は次の2名が候補者として選ばれた。13

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