(2) 研究発表会以上のごとく、本論は釈迦・舎利信仰と宋風受容について遺例に即しながら明らかにした視点と叙述は説得性に富み、今後、鎌倉美術における宋風受容の在り方について新たな展望を示した意義は大きく、本年度の鹿島美術財団賞にふさわしい研究として高く評価される。以上である。② 2002年度助成金贈呈式2002年度「美術に関する調査研究」助成金贈呈式は、第9回鹿島美術財団賞授賞式に引き続いて行われ、選考委員を代表して高階秀爾・東京大学名誉教授から2002年1月25日の助成者選考委員会における選考経過について説明があった後、原常務理事より助成金が贈呈された。本年度の研究発表会は5月17日鹿島KIビル大会議室において第9回鹿島美術財団賞授賞式ならびに2002年度「美術に関する調査研究」助成者への助成金贈呈式に引き続いて、財団賞受賞者とそれに次ぐ優秀者である計4名の研究者より次の要旨の発表が行われた。研究発表者の発表要旨:① 「江戸時代火事絵巻研究ー表現の手法と目的ー」発表者:柳川藩主立花家資料室学芸員植野かおり物語は、幕府による出版統制の対象となりながらも、特に目黒行人坂の大火以降は様々江戸時代を通して江戸はたび重なる火災に見舞われてきた。特に一明暦の大火、目黒行人坂の大火、丙寅の大火、佐久間町の大火、ーなどの大火は、江戸の町の大半を灰儘に帰し、数千人もの死傷者をだした大惨事でありながら、それら大火災によって大都市江戸が形成されていったともいえる。火事は「江の花」とうたわれ、江戸の人々にとって最大の関心事のひとつであった。火事報道やそれにまつわる-15-
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