—再発見された青木木米の「陶法伝書」を中心に一一—の文学作品、修辞学書の数量は、いまだ制限的である。それらが如何に代表的な事例と考えられるとは言え、参照を要する文献は他に多い。また、この場合、具体的に考察の対象とされたレーニ作品も特定のものに限られていた。こうした状況を考え、申請者の調査研究は、より広範なレーニ作品を対象に、それらに関連付けられる資料を体系的に調査、発掘することを第一の目的としている。更に、このようにして、得られた結論に基づき、レーニ画に関連付けられる文学作品のもつ理論的な文脈をも探求することで、画家がその歴史・物語画をどのように表象しようとしたのかという、ある種の絵画理論的思考を明らかにしようとするのが、本調査研究の第二の目的である。17世紀の絵画作品一文学作品一修辞学理論ー絵画理論の連関についてはこの各部分の関係を取り上げて考察するものこそあっても、その全体の構造を解明しようとする研究はほとんどない。よって、これは今後の17世紀絵画史・絵画理論史の研究一般に広く資すると信じられる。⑧ 江戸時代後期の京焼における陶芸技法の承継について研究者:横浜美術館学芸課長青木木米の陶芸技法については、その技術的な詳細を記録する資料を欠いていたため、その研究ぱ必ずしも深化を見ていないのが実情である。しかしながら、木米「陶法伝書」の再発見によって、その広範囲にわたる陶技の実際を技術的な詳細において解明し得ることは、江戸時代後期の陶芸史を研究する上で少なからぬ意義を有するものと考えられる。さらに、木米のこの「陶法伝書」には、仁清や乾山などの陶芸技法に触れる部分が多々見られ、これらの検討によって、京焼の技法における伝統と革新という承継関係に新たな知見が得られるものと期待される。構想本研究は①再発見された木米の「陶法伝書」自体の研究と②それを京焼に関わる他の陶芸技法書と比較考量するという二段構成とする。①においては、「陶法伝書」の書誌学的検討、及びその成立等を調査し、それに基づいて「陶法伝書」の本文確定を目指す。その上で、この伝書が示す木米の陶芸技法を検討する。②においては、①の結果を受けて木米の陶芸技法を他の技法書と比較検討し、江戸-39 -二階堂充
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