鹿島美術研究 年報第20号
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時代後期における京焼の技法的承継関係に関わる考察を行う。その比較に際して検討される資料は以下のものが含まれる。・『楽焼秘嚢』(中田潜竜子、1736年刊)・『陶工必用』(尾形乾山、1737年録)・『陶器穂録』(松田平四郎、1808年頃筆録)・『陶器指南』(欽古堂亀祐、1830年刊)・『謡曲控』(本多佐兵衛、1838年頃筆録)⑨ 昭和戦前期の洋画における古典主義と浪漫主義研究者:東京国立近代美術館研究員大谷省本研究の目的は、「古典主義」「浪漫主義」といった美術史において頻繁に用いられつつも、近代日本の美術においては明確な定義づけもないままに濫用されてきた用語が、昭和戦前期においてどのように認識されていたのかを考察するとともに、昭和戦前期洋画の読み直しをはかるものである。これまで昭和戦前期の洋画は日本的なものへ向かう動きとシュルレアリスムや抽象といった前衛的な動き(ごく単純にいえば国粋化と国際化)とに分けて論じられるか、また帝展改組や多くの団体の消長といった画壇上の問題を中心に論じられることが多かったように思われる。こうした図式的な論じ方からこぽれてしまう作家・作品(例えば大沢昌助、岡田謙三など)が、古典主義と浪漫主義という視点から改めて見直されることになるはずである。また、当時の画家たちにとって、何が「古典」と目されていたか、あるいは「浪漫主義」がどのような意味合いをもっていたかを考えることは、受容史としての近代日本洋画史を再考すること、また昭和戦前期という時代状況において、美術を他の思想、文学、あるいは社会全般との関係の中から再考することにつながっていく。以上のような考察をもって、近代日本美術史を再構築していく一歩としたい。-40 -

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