の読取りという問題を考える上でも「キモンとペロー」研究の意義は大きいと考えられる。⑱ 15世紀東方イスラム世界の造本美術に関する総合的研究研究者:東海大学文学部講師関15世紀頃の東方イスラム世界の人々にとって、公用語として用いられていたペルシア語の筆写のための書体の選択は、重要な問題であった。ペルシア語の書写に使用されるアラビア文字はアラビア語の筆写にこそふさわしく、ペルシア語の筆写にはそぐわない、という理由から、古来よりペルシア語を書くための書体として様々な書体が考案されて来た。14世紀後半に考案されたナスタァリーク書体は、ペルシア語を写す書体として最もふさわしい書体としで爆発的に流行し、15世紀以降の東方イスラム世界で最も重要な書体として認められ、現在でもその評価は変わっていない。この方向を決定づけたのは、15世紀の写本製作であり、この書体で書かれた書を更に美しく見せるために、写本製作にかかわる職人達は製作意欲をかきたてられていた。その結果、金泥や金銀箔、その他の顔料を用いた料紙製作や皮の透かし彫り、切り紙等を用いた装禎術が考案され、後のイスラム世界の写本製作の指針となっている。これまで申請者はトルコのみならず、イランヘも赴き、研究を行って来たが、更に詳しく細部の分析を進めるために、両国における追加調査ならびにイギリスの大英図書館、ドイツのベルリンの国立図書館所蔵の写本の調査が望まれる。また、それらの調査結果をまとめるにあたって、単行本として出版されている複製類の図版を比較検討する。このような調査と分析を通じて、これまで個別に研究が行われがちであった書体、書風の変遷、料紙装飾や装頓術の発展などを15世紀の写本について総合的に考察し、編年的研究を進めたい。これによって、同時代の写本絵画の研究の進展にも資すると考える。⑲ 院政期における宋代美術の受容について一ー五台山騎獅文殊菩薩像を中心に一―-研究者:京都大学大学院文学研究科博士課程皿井本研究の目的は、日本における十一世紀から十二世紀にかけて、特に院政期におけ喜房舞-48-
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