⑫ ジャポニスム流行下のフランスにおける日本陶器コレクションの形成⑳ 17世紀オランダにおける風景画と都市図の関係についてカサットが、その作品や美術収集行為を通じて、いかに世紀転換期のアメリカの芸術やフェミニズム運動に寄与し、影響を与えたのかという問題も考えたい。文化交流とジェンダーという二つの軸が交差することになる。研究者:神戸大学大学院総合人間科学研究科博士後期課程本研究の最大の目的は、『観古図説陶器之部』が主にヨーロッパヘ輸出されるまでの過程、およびこの著作と1870年代後半以後のフランスにおける日本陶器収集との相関関係を明らかにすることである。『観古図説陶器之部』(全7巻、1876年から79年にかけて刊行)は、その題名の如くら日本の陶器に限定した著作であり、第5巻まではフランス語とドイツ語の翻訳本が存在した。またこの著作は、主にヨーロッパヘ向けて輸出された関係から、その読者の大方が西洋人であり、同時代の日本人にはあまり知られていなかった。1860年代から70年代にかけては、一般に西洋諸国で人気を集めていた日本の焼物は、当時のジャポニスムの流行を意識して作られた、華麗な装飾や緻密な技巧を特色とする輸出向けの磁器であった。しかしながら、同様にヨーロッパヘ向けて輸出された蛸川の著作では、磁器については触れられていない。磁器を除外して陶器を研究対象にした蛸川は、どのような意図をもって『観古図説陶器之部』を刊行したのか。またそれが直ちに翻訳・輸出された背景には、西洋人側からの何らかの要請があったのか。以上のような事柄を明らかにするため本研究では、一般に流布していない幾つもの貴重な一次資料を用いる。全ての資料を調査するには相当の時間、経費、労力が必要であるが、それだけに本研究は真新しい成果が期待できるであろう。研究者:女子美術大学短期大学部専任助手大川智ファン・マンデルはヨーロッパにおいて初めて風景画に独立した一章を与えた絵画論の著者として知られる。『絵画の書』(1604年)の風景画の章には画家の心構えや具今井祐子51
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