⑫ 舞楽面の基礎研究ー一文字資料および画像によるデータベースの作成ー一一⑬ 古代ギリシアの運動選手墓碑研究者:東京芸術大学非常勤講師村山本研究は、仮面の形式的・様式的変遷に関する研究の一環として、舞楽面の研究基盤を作成することを目的とする。日本に現存する舞楽面の全体像は田邊三郎助氏、西川杏太郎氏、後藤淑氏等によってまとめられてきた。その中で、田邊氏が度々発表されてきた「舞楽面遺品一覧表」は、全国を最も網羅した舞楽面の遺品分布資料である。一方、後藤氏は、民俗仮面の一部としての研究ではあるが、調査された作品のほとんどの写真を掲載されている。しかし、諸氏の示す遺品ぱ必ずしも同じものではなく、名称や数に相違が見られることもある。以上の研究状況を見るに、諸氏の研究成果をまとめるかたちで舞楽面の全体像をつかむことが必須であると考える。近年、仏教彫刻の基礎資料集成が成熟しつつあるが、仮面の研究基盤はまだ整っているとは言い難い。舞楽面は、日本の仮面の中で最も長期に亘って作られ、広範囲に遺されている。したがって、舞楽面の基礎を整えることで、今後の仮面研究の軸とすることができると考える。研究者:名古屋ボストン美術館ギリシア墓碑の研究は19世紀以来の伝統がある。しかし、長い間、その研究対象はァッテイカ地方で制作された作品に偏っていた。作例が多い上に芸術的な質も高いためである。近年、エーゲ海を囲むギリシアの各地方やトルコでの発掘が進み、いわゆるイオニア墓碑の作例も充実しつつある。それに伴い研究も進んできた。とはいえ、ァッテイカの墓碑もそれ以外の地方の墓碑も未だ別々に研究されている。ギリシア世界全ての墓碑を蝕括的に扱った研究はまだない。それゆえ、全体的な展開の歴史がまだっかみきれていない、というのがギリシア墓碑研究の現状である。確かに、個々の事例が明らかになっていない今の段階では全体像などつかめない、という意見もあるかもしれない。しかし実のところ、個別研究の限界も見えてきた。各地の個別事例を-59 田中咲閑
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